優しい涙
藤波様が一日の仕事を終え、部屋に戻ってくるのは就寝の時刻だ。


朝早く出て行ったっきり、雑務に追われなかなか戻ってこれない。


藤波様が自分で改築し、抜け穴や屋根裏部屋があるこの部屋は、本物の秘密基地みたいだ。


藤波様はこの部屋で過ごす時間が大好きだと話してくれたことがある。



「ゆっくり過ごさせてあげたいな…」


思わず口から出た自分の言葉に、僕はグサリと刃物で胸を突かれたような痛みを感じた。



藤波様がこの部屋でゆっくり過ごせないのは…


僕のせいだ…

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