きら星の短編集

彼は、一人ひとりにしっかりとお返しをし、僕にもお礼を言ってくれる。




だけど、やっぱり僕もチョコレートが欲しい。




……特に、彼女からのチョコレートが。




「そうちゃん。今年は、嫌だったら断ってもいいよ。」




高校２年生のバレンタインデー前日。彼、栗原恭平（くりはらきょうへい）は僕の隣でそんなことを言った。




「別にいいよ。来年は受験や就活なんかで忙しくてバレンタインなんかやってる暇ないだろうし。こうなれば最後まで僕はキョウの運び屋でいるよ。」




「……ごめんね。」




「キョウが謝ることないって。」




何気ない会話だった。




明日は例年と同じように過ぎていくものだと思っていた。




でも、今年の２月１４日は人生でとても大きな意味を持つ一日になることを僕は知る由もなかった。