きら星の短編集
……失恋なんて、何度も経験してきた。




僕の専売特許みたいなもんだ。




でも今回のはさすがにこたえた。




ずっと好きだった女の子が、僕の親友を好きって……誰に怒ればいい?




誰に悲しみをぶつければいい?




僕はなす術もなく、誰もいない運動場を眺めていた。




「はぁ……はぁ……やっと見つけた。」




聞き慣れた声が聞こえた。彼の手にはさっきのチョコレートがある。




「……はぁ、はぁ。どうしたの?そうちゃん。」




走ってきたのか、その息は荒い。




「……別に。キョウこそ何?チョコレート見せびらかしに来たの?」




つい口からキツい言葉が出てしまう。




「……やっぱり。ちゃんと誰宛かその子に確認しないと。はい、これ。」




そう言ってキョウは僕の目の前にチョコレートを出した。




「開けてみて。」



キョウに言われて徐に箱を開けると、そこにはメッセージカードが添えられていて、『谷川くんへ』とかわいらしい字で書かれていた。




「えっ……僕に?」




「うん。僕も開けてびっくりした。今井(いまい)さん、僕宛だって言ってないでしょ?すごく悲しそうにしてたから、教えにきてあげたの。そうちゃん、ずっと今井さんのこと好きだったもんね。」




「……知ってたの?」




「そりゃ、親友ですから。それより、早く行って誤解を解いてあげなよ。まだ教室にいるはずだから。」



「……ありがとう。」




僕はキョウにそう言って、教室へ走り始めた。






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