きら星の短編集
教室には、彼女1人だけがいた。




自分の席に座っている。




「今井さん……」




僕がそう言うと、彼女は驚いたように僕の方を振り向いた。その目には光るものが見える。




「……ごめん。これ、てっきりキョウのだと思って。ショックで……」




僕は彼女にチョコレートを見せた。




「……僕、ずっと今井さんのことが好きでした。」




僕がそう言うと、彼女は近づいてきて僕の手からチョコレートをとった。




「……勇気出して作ってみたのに、フラれたのかと思った。」




彼女はそう言うと、自分の口にチョコレートを入れた。




「……少し失敗だね。苦いや。」




僕はそう言って微笑む彼女に、唇を重ねていた。




あのいい香りがする。




始めて貰ったチョコレートは、初めてのキスで、少し苦い、でもとっても甘いものになった。


< 30 / 72 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop