きら星の短編集
「最初は何してるのか分からなかったし、そんなに気にも留めてなかったんだけど、ずっといるから気になって、知り合いに名前を聞いたんだ。で、その時に俺のことを見てるんだってことも聞いちゃった。」
「えっ?そ、そうだったの?」
……ということは、塚田くんは私がベランダにいる理由を知ってたってこと?恥ずかしい……女子に聞いたんだ……。
「何かそれ以来気になって……でも、ずっとベランダからだし、勘違いなのかなって思ったりしてなかなか声かけられなかった。」
あれは失敗だったなぁと塚田くんは言う。
「だって、勘違いじゃなかったもん。篠原さん、一度だけ俺たちの試合観に来てくれたでしょ?」
「あ……」
気づいてたんだ。確かに、一度だけ近くの学校の野球部との練習試合を観に行ったことがある。
「気づいてないと思ってた?」
私は首を縦にふる。
だって、一人でコソッと観に行っただけだし、それに……
「あの試合、別に公式試合でもなかったし、途中で雨も降ってきて、最後まで応援してくれる人なんかあんまりいなかった。でも、篠原さんは最後まで応援してくれてた。ちゃんと聞こえたよ?頑張って!塚田くんって言葉。」
塚田くんはそう言うと、キラキラした笑顔で私を見つめた。