きら星の短編集
「……私は蛍なんだよ?」





「……うん?」





どういう意味だろう。いよいよ本格的に話の筋が見えなくなってきた。





「そうじゃない。私は本当の蛍なの。だから苗字もなかったし、ここでしか優太に会うこともできなかった。でもね、ここで優太と過ごした時間、すごく幸せだった。」





俄かには信じられなかったが、蛍の様子から嘘を言っているとは思えない。





「……優太は、もっとみんなと関わらないといけないよ。ここで夕陽を見るだけじゃ、優太の世界は広がらない。私はそのことを伝えようと思っていたんだけど、なかなか言えなくて。」





「……蛍がいれば、僕はそれでいいよ。」





「……じゃあ、なおさら私の代わりになる大切な何かを見つけるために、世界を広げなきゃ。」






蛍は、そう言って僕に優しくキスをした。






「……もう秋になるね。私は秋になったら、消えちゃうから。」



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