きら星の短編集

「あの、私……「悪いけど、そいつのことは諦めてくれるか?」」




私が返事をしようとしたとき、その声を遮るように、いつも聞き慣れた声が私の背後から聞こえた。




そして私の肩からは、置かれた手の温もりが伝わってくる。





「……白石くん。」





「こいつ、俺のだからさ。」





達也はそう言って、私のことを抱きしめた。





「ちょ……達也、何して……「うるさい。黙って抱かれてろ。」」





私はその言葉に顔を赤くした。





「……わぁー、僕、こんな失恋の仕方したの初めてだよ。永瀬さんの態度見てるだけで、勝ち目がないのが分かるなんて。」






「そう言うな。お前はいい男だけど、俺には勝てないんだよ。」





「わ、すごい自信家。……永瀬さん。」





重岡くんは笑顔だった。





「……ありがとう。」





「……うん。」





「じゃあ、また学校でね。」





重岡くんは私たちに背を向けて歩いて行った。


< 63 / 72 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop