きら星の短編集
「あの、私……「悪いけど、そいつのことは諦めてくれるか?」」
私が返事をしようとしたとき、その声を遮るように、いつも聞き慣れた声が私の背後から聞こえた。
そして私の肩からは、置かれた手の温もりが伝わってくる。
「……白石くん。」
「こいつ、俺のだからさ。」
達也はそう言って、私のことを抱きしめた。
「ちょ……達也、何して……「うるさい。黙って抱かれてろ。」」
私はその言葉に顔を赤くした。
「……わぁー、僕、こんな失恋の仕方したの初めてだよ。永瀬さんの態度見てるだけで、勝ち目がないのが分かるなんて。」
「そう言うな。お前はいい男だけど、俺には勝てないんだよ。」
「わ、すごい自信家。……永瀬さん。」
重岡くんは笑顔だった。
「……ありがとう。」
「……うん。」
「じゃあ、また学校でね。」
重岡くんは私たちに背を向けて歩いて行った。