イデア
○キヨエ
■ロク
あの人、お母さんを、見たこと。
咲の継母になっていたこと。
お兄ちゃんに話すと、眼鏡の奥の瞳が揺れたのがわかった。
あんまり気にするなって、私の頭をくしゃっと撫でたお兄ちゃん。
大好きなお兄ちゃん。
高校を卒業してすぐに就職して、施設から2人で出た。
あの部屋に戻るために。
お母さんたちとの思い出なんて、全然思い出せない。
でも、私の中はお兄ちゃんや、伶たちとの思い出で溢れていた。
辛い思い出だけ置いて私たちを捨てたあの親が許せない。
そんなのと幸せに暮らしてる咲が―――――