イデア
「は・・・放してよ」
「汐映」
「な・・・っ何・・」
「俺のこと好きなんじゃないの?」
にやりと笑った羽瀬の言葉に、体が固まる。
ただ目を見開いていると、羽瀬も立ち上がる。
「好きな人の一挙一動っていうのは、心臓わし掴むくらいの威力あるんだよ。知らなかった? どう? 違う?」
羽瀬の目に、言葉に、私は臆病になる。
そんな顔で私を見ないで。
あんたは、咲のもんでしょ。
「わ・・・・かんな・・」
「え?」
「わかんないよ!!」
羽瀬を突き飛ばして階段を駆け下りる。
教科書なんて、もういい。
「汐映!!・・・・俺は・・っ」
羽瀬の声に足を止めそうになったけど、実際私の体は一瞬も反応しなかった。
恐い。
感じたことのないこの感情が。