【完】そばにいるだけで
桐生くんは、無口だった。
そしてあまり友達と群れるのが好きではないようで、休憩時間は机に突っ伏しているか、本を読んでいるか、屋上にいるか、のどれかだった。
でも、容姿端麗な彼を女子が放っておくはずがなく、まずは視線を送ってみたり、勇気を出して話しかけてみたりと、日がたつにつれ、いろいろ試みてみる子が現れた。
わたしはというと、その様子をハラハラしながら眺めているだけで、どうすることもできなかった。
というより、どうしたらいいのか、わからなかった。
桐生くんが更に一目置かれるようになったのは、テストの成績上位者が貼り出された時だった。
総合で一位だったのだ。
それを見た時、わたしは思わず「うそ!」と叫んでしまい、周囲から冷ややかな視線を浴びせられてしまった。