【完】そばにいるだけで
「……そうか」
先輩は背もたれに体を預け、空を見上げ、大きく深呼吸した。
「……ごめんな。無茶なことして」
そう言うと、昴先輩は立ち上がった。
わたしは首を横に振ると、先輩は、
「それにしても、お前、かわいくなったな。なんか、いい女になったよ」
と言って、にたりと笑った。
わたしはこの時、褒められてこそばゆくて、照れ笑いをしていたけれど、この一部始終を見ていた人がいたなんて、知る由もなかった。