【完】そばにいるだけで



弁解しなきゃ。



そう思ったわたしは、城山さんに「あのね、あれは……」と言おうとしたけれど、



「イメチェンしてからモテモテだねっ」



と言い残し、長い髪をくるくると指に巻きつけながら、わたしの元から去って行った。



わたしはしばらく放心状態になった。



そして、はっと我に返った。



城山さんの大きな声、きっと桐生くんも聞こえたよね。



わたしは、とてつもなく大きな不安に襲われた。



おそるおそる桐生くんの方に目をやったけれど、見えるのは彼の背中だけで、彼が何を考えているのか、どんな表情をしているのか、まったくわからなかった。


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