【完】そばにいるだけで
「……僕には、甘えられなかった?」
その一言で、わたしは固まった。
聞こえてなかったかも、という淡い期待はもろくも崩れた。
「ううん、そうじゃなくて!」
とっさにそう言ったけれど、次の言葉が出てこない。
だって、あの時わたしは、桐生くんのことで悩んでて……。
桐生くんの少し寂しげな視線が痛かった。
「そういうんじゃなくて……城山さんが言ってたのは、中学時代の先輩で……その、本当に、なんでもなくて……」
どんどん声が小さくなる。