【完】そばにいるだけで
「桐生くん」
「ん?」
「わたしね、悩んでたの。どうしたら、もっと桐生くんと仲良くなれるんだろうって」
そう言うと、桐生くんはうなずいた。
わたしは、大きく深呼吸し。
「わたし、デートの時にね、桐生くんにリードしてもらいたかったんだ。だけど、それをどう伝えたらいいのかわからなくて。それで、なんだか、いろいろと思いつめちゃって……」
桐生くんは静かに耳を傾けている。
「その時に、その……中学時代の先輩にたまたま会って……わたし、別に何に悩んでるかなんて言わなかったんだけど……だけど、わたしがなんか悩んでるっていうのが先輩わかったみたいで。それで、わたしに見かねて、優しい言葉をかけてくれたから、わたし、思わず泣いちゃって……」
わたしはうつむいたまま言葉を連ねた。