【完】そばにいるだけで
「草壁さんが、好きなことをして楽しそうにしているところとか、好きなものを食べて幸せそうな顔をしているところとか、そういうのが見られるだけで僕、嬉しいから。……だけど、そればかりだと物足らなかったんだね。ごめん、気がつかなくて」
そう言うと、桐生くんは少し頭を下げた。
「ううん」
わたしは首を横に振りながら、体中の力が抜けていくのを感じた。
そして桐生くんの気持ちがじんわりと心に染みて、嬉しくてたまらなかった。