【完】そばにいるだけで



そのさりげない優しさを目撃して以来、わたしはますます桐生くんに惹かれていった。



桐生くんはただ無口なだけ。



本当はとても優しい人。



まさに、サイレント王子。



だけど、わたしはただ彼に憧れているだけで、告白するだとか、まさかつき合うだとか、そんなことは考えられなかった。



わたしはただ眺めているだけ。



桐生くんの前髪が、窓から入ってくる風にふわりと揺れるのを見るだけで胸キュンしている、ただのクラスメイト。



桐生くんは同じクラスにいるのに、わたしには遠すぎる。



桐生くんは誰もが認める美青年で、成績トップの優等生。



そして、さりげない優しさを持ち合わせた『王子さま』だ。


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