【完】そばにいるだけで
「ここ、ほんと温かいね」
「ここで、いっそ植物でも育ててみようか」
そう言うと、桐生くんはくすりと笑った。
この穏やかな雰囲気が好き。
滔々(とうとう)と静かに流れる小川のような時間。
こんな時間がずっと続けば……。
そう思いつつも、実は頭の中は、今朝、瑞希に教えられた「妊娠検査薬」のことで占領されていた。
片や、のほほんとした会話を楽しんでいる女子高生、片や、妊娠している事実と向き合っているある女子高生。
「誰なんだろう」
「なにが?」
桐生くんに返答されて、思わず言葉が漏れていたことに気づき、焦った。