【完】そばにいるだけで



「あ、うん。なんか、うちのクラスのゴミ箱に捨てられてたらしくって」



「なにが?」



桐生くんの前で、「妊娠検査薬」と言葉にするのが恥ずかしくて、言葉につまっていると、桐生くんは首を傾げ、まっすぐわたしを見つめた。



「えっとね……妊娠、検査薬」



呟くように答えると、桐生くんの中で何か合点が合ったようで、ぱっと目を見開いた。



「それで、朝、三郷さんが来た時、みんなそわそわしていたのかな」



「三郷さんのじゃないかって、みんなが噂してる」



わたしはそう言って、大きなため息をついた。



「どうかしたの?」



桐生くんはわたしの顔をのぞき込む。


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