【完】そばにいるだけで
「あたしがタバコ吸ってたこと、誰にも言わないでよ」
「うん」
しばらく沈黙が続く。
わたしは、盗み聞きはよくないと思いながらも、身を隠しながら聞き耳を立てていた。
「ここでいつもこっそり会ってるんだ、草壁さんと」
突然自分の名前が出てきて、びくんとする。
「そういえば、この前草壁さんとデートしてたよね」
それを聞いて、はっとした。
やっぱり、あの時三郷さんは、わたしに気づいてたんだ。
やっぱり、わたしが噂を流した張本人だって、思ってるのかもしれない。
二人の間に再び訪れた沈黙の間、わたしは一人焦っていた。