【完】そばにいるだけで
「はあ……」
わたしは机に頬杖をついて、大きく息を吐き出した。
「ずいぶん大きなため息だねぇ」
同じクラスになって以来、仲良くなった瑞希(みずき)が、わたしの顔をのぞき込む。
「恋煩(こいわずら)いですか?」
「いやっ、えっと、そうじゃなくて……」
「わかりやすいなぁ」
瑞希はくすくすと笑った。
瑞希に桐生くんへの気持ちを話したのは、少し前のことだ。
「聖菜は好きな人とか、いないの?」と、ずばり尋ねられて、答えないわけにはいかなかった。
だけど今となっては、瑞希が尋ねてくれたことに感謝している。
聞いてくれなかったら、自分からはなかなか打ち明けられなかったと思う。
一人で悶々と悩んでいたと思う。