【完】そばにいるだけで



「それはないでしょ。だって、あの日だって聖菜があそこに来ることは、わかってるんだからさ」



「あ、そっか」



「だけどまあ、直接聞くわけにはいかないもんねぇ」



「立ち聞きしてたの、バレるもんね」



わたしと瑞希はう~ん、とうなった。



「その時の話を桐生くんから切り出してくれれば、ちょっと安心できるよね」



そう。



桐生くんから切り出してくれれば、安心できるのだけど。



数日たった今も、そんな話は一切してくれなくて。



だから、どんどん疑心暗鬼になってしまう。



「ほんと、聞かなきゃよかった。知らなかったらこんな気持ちにならずに済んだのに」



わたしは大きなため息とともに、机に突っ伏した。


< 174 / 207 >

この作品をシェア

pagetop