【完】そばにいるだけで
「それはないでしょ。だって、あの日だって聖菜があそこに来ることは、わかってるんだからさ」
「あ、そっか」
「だけどまあ、直接聞くわけにはいかないもんねぇ」
「立ち聞きしてたの、バレるもんね」
わたしと瑞希はう~ん、とうなった。
「その時の話を桐生くんから切り出してくれれば、ちょっと安心できるよね」
そう。
桐生くんから切り出してくれれば、安心できるのだけど。
数日たった今も、そんな話は一切してくれなくて。
だから、どんどん疑心暗鬼になってしまう。
「ほんと、聞かなきゃよかった。知らなかったらこんな気持ちにならずに済んだのに」
わたしは大きなため息とともに、机に突っ伏した。