【完】そばにいるだけで



「意図的?」



「あ、ううん。なんでもない。あたしの彼がさ、あの怪しい通りにアパート借りてんの。便利で安いからって理由で」



「あの時、一緒にいた人?」



「そうそう。売れないバンドマン。お金ないのよ」



三郷さんはそう言って、けらけらと笑った。



その後も三郷さんは、彼の皿洗いのアルバイトの話や、お金がなくてごはんにマヨネーズをかけて食べてた話などを、楽しそうに話していたのだけど、彼のバンドのファンの話になった時、少し顔を曇らせたので、わたしは直感的に何かあると感じた。



「どうしたの?」



突然のわたしの問いかけに、三郷さんは一瞬目を見開いた。



そして、大きなため息をつき。


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