【完】そばにいるだけで



「でも梅原さん、本当はまだ、元彼が忘れられないんだと思う。本当に今が幸せなら、過去の男のことなんて、どうだっていいはずだもの」



鋭い。



たしかにそうだ。



幸せなら、そんなつまらないことはしない。



「なんか、ちょっと心配かも。梅原さん」



わたしが何気なくそう言うと、三郷さんはこちらに向き直り。



「そういうかわいらしいところが、桐生くんも好きなんだろうね」



なんてことを突然言い出すので、わたしはおどおどしたのと同時に、一瞬胸がずきんとした。



「あのさ」



わたしはうつむいたまま切り出した。


< 185 / 207 >

この作品をシェア

pagetop