【完】そばにいるだけで
「なに?」
「三郷さんと桐生くんって、仲いいんだね。わたし全然知らなかった」
わたしはできるだけ明るく、なんでもないように言った。
「仲がいいっていうほどのものでもないよ。中学ん時、同じ塾だっただけ」
そう言って、三郷さんはにっこり笑ったかと思うと、はっと何かに気づいたようで。
「あ。そうだよね。草壁さんが心配してたことを、桐生くん伝いにあたしが知ってたら、なんで知ってんの?ってなるよね」
わたしは、目を伏せたまま苦笑した。
「大丈夫だよ。本当に塾が同じだっただけ。だって、あたしが中学時代好きだったの、桐生くんの友だちだもん」
三郷さんは、わたしをまっすぐ見た。