【完】そばにいるだけで
三郷さんと一緒に店を出ると、冷たい空気が頬を刺した。
空を見上げると、鉛色の雲がどんよりと空を覆い、今にも雪が降り出しそうだった。
「うわ、寒っ」
「ほんと」
わたしは、ダッフルコートのポケットに手を突っ込んだ。
「草壁さんはバレンタイン、何をあげるの?」
「あ」
そうだ。
もう、バレンタインデーは3日後じゃない。
もやもやした日を過ごしていたから、プレゼントを考える余裕がなかった。