【完】そばにいるだけで
「やだ、まさかまだ用意してないの?」
「う、うん」
わたしは、笑ってみせたけれど、顔が硬直していた。
「そうだ。ライブおいでよ、桐生くんと一緒に」
「ライブ?」
「うん。バレンタインデーにね、彼がライブやるの。チケットはプレゼントするから」
そう言って三郷さんはにっこり笑った。
わたしはその笑顔を見て、自分が恥ずかしくなった。
こんなに明るくてさっぱりしている彼女を、見た目や噂だけで判断していたなんて。
人を見た目や噂だけで判断しちゃ、いけない。
今回ばかりは本当に、痛感した。
「うん。桐生くんにも言ってみる」
自然と笑みがこぼれた。