【完】そばにいるだけで
すると桐生くんは、そっとわたしの髪を撫で、
「かわいい、わがままちゃん」
と言った。
頬が真っ赤になっているのがわかる。
わたしのほてりが、彼のしなやかな指に伝わってしまうのではないかと思うと、ますますほてってしまう。
桐生くんはそっとわたしの手を握り。
「そう。彼女とは塾が同じでさ」
と語りだした。
「彼女は僕の友だちが好きだったんだ。それで、頼まれたんだよ。気持ちを伝えてくれないかって。でも、断った」
「三郷さんも言ってた。桐生くんに断られたって」
「うん。好きって気持ちは自分で伝えた方がいい、と思ったからだけど……」
そこまで言って桐生くんは、少し口ごもった。