【完】そばにいるだけで
桐生くんは、わたしの手首をつかみ、ぐいと自分の方へ引き寄せた。
そして、わたしの背中に腕を回し、くすりと笑った。
「聖菜はまっすぐで正直だ」
そう言って、優しく頭を撫でてくれた。
わたしはほっとして、涙がぽろぽろとこぼれた。
「それって、とても強いんだよ。うらやましい」
わたしは、首を大きく横に振った。
「僕は、そういう聖菜が好きなんだ」
桐生くんは、わたしの顎をそっと指で押し上げ、優しくキスをした。
涙の味だった。