【完】そばにいるだけで



結局、あの日、無線室で三郷さんと二人きりだったのは、ただの偶然だったと、あれから桐生くんに教えてもらった。



桐生くんより先に、三郷さんが無線室のベランダにいて、煙草を吸っていたらしい。



そうとは知らず、無線室に行った桐生くんは、窓から入ってくる煙草の煙が煙たくて思わず咳き込んでしまったそうだ。



なぜ、ここにいるの?と尋ねたら、



「妊娠検査薬の噂が耳に入ってきて、教室にいるのがうんざりだった。タバコの1本や2本、吸いたくもなる」



と言っていたそうだ。



それなのに、わたしは勝手に不安になって、疑って。



桐生くんのことを信じてあげられなかったなんて。



彼女、失格。


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