【完】そばにいるだけで
ライブハウスを出て、手をつなぎながら街を歩いた。
なんだか手をつないでいるだけで、照れくさい。
桐生くんは、何もしゃべらない。
何を考えているんだろう。
ちらりと桐生くんを見上げる。
シャープな顎のラインを見て、改めて格好いいと思った。
「あのさ」
桐生くんは、前を見つめたまま口を開いた。
「なに?」
「さっき、勝手に断っちゃってごめんね」
わたしは首を大きく横に振った。
「さすがに、知り合って間もない人の部屋に、二人だけで行くはどうかと思うし」
うんうん。
わたしもそう思う。
「それに……」
すると桐生くんは立ち止まり、わたしに向き直った。