【完】そばにいるだけで



ライブハウスを出て、手をつなぎながら街を歩いた。



なんだか手をつないでいるだけで、照れくさい。



桐生くんは、何もしゃべらない。



何を考えているんだろう。



ちらりと桐生くんを見上げる。



シャープな顎のラインを見て、改めて格好いいと思った。



「あのさ」



桐生くんは、前を見つめたまま口を開いた。



「なに?」



「さっき、勝手に断っちゃってごめんね」



わたしは首を大きく横に振った。



「さすがに、知り合って間もない人の部屋に、二人だけで行くはどうかと思うし」



うんうん。



わたしもそう思う。



「それに……」



すると桐生くんは立ち止まり、わたしに向き直った。


< 201 / 207 >

この作品をシェア

pagetop