【完】そばにいるだけで
なに?
そんなに改まって。
ドキドキしながら、桐生くんの次の言葉を待つ。
「その、なんていうか……軽々しくしたくないっていうか。……僕は、聖菜が大切だから。……聖菜の気持ちを無視したくないから」
ぽつりぽつりと話す桐生くんの顔は、真っ赤だった。
真っ赤になりながら、まっすぐわたしを見つめるので、わたしは、きっともっと赤くなっていたと思う。
わたしのこと、こんなに真剣に考えていてくれたなんて。
こんなに一生懸命伝えてくれるなんて。
「ありがとう」
桐生くんの気持ちが嬉しくて、胸がいっぱいだった。
わたしは、少し背伸びして、そっと桐生くんの頬にキスをした。
桐生くんは、にっこりと微笑んでくれたけれど、わたしはそこが路上だったことを思い出し、また赤面してしまった。