【完】そばにいるだけで
入学式の日。
わたしは洗面所の鏡の前で、念入りに髪をとかしていた。
後ろで二つに分けて、茶色のゴムで結ぶ。
「よし」
真新しい制服姿の自分をチェックしてリビングへ行くと、妹の愛莉(あいり)がわたしを上から下へなめるように見るやいなや、
「地味」
と言った。
「ちょっ、地味って何よ。制服に地味も何もないでしょ」
ついさっき自分の姿にそれなりに満足していた矢先に、一言で切り捨てられてしまい、一気にテンションが下がる。