【完】そばにいるだけで
昼休み。
昼食を食べ終えたわたしは、瑞希に背中を押されて、教室を追い出された。
屋上へ向かう足取りは軽いような重いような、奇妙な感覚だった。
屋上の扉を開けると、太陽が少し眩しくて、目を細めてしまった。
見渡すと、友達同士でおしゃべりしている子たちや、カップルたちがいたりして、思いのほか人がいた。
そして、肝心の桐生くんもその中にちゃんといた。
人気の少ない隅の方のコンクリートの壁にもたれて、座っている。
すらりと長い足は、片方はだらりと伸ばし、もう片方は膝を立てていた。
静かに読書しているその姿は、本の中の王子さまがそのまま出てきたのではないかと思わせるくらい、涼しげだった。