【完】そばにいるだけで
この状況で話しかけるなんて、わたしには無理……。
ため息が出た。
そして、いつもめげずに話しかけにいく城山さんがすごい、と改めて思った。
『とにかく桐生くんの視界に入るようにしよう』
瑞希の言葉が頭の中で響いた。
今のわたしには、それが精一杯だ。
とにかく、桐生くんのそばに行こう。
わたしはごくりと唾を飲み込むと、意を決して一歩ずつ彼に近づいていった。
隣りに座る勇気はない。
まさか真正面になんか、座れない。
どこに座ろう。
どこが無難……。
考えながら一歩ずつ近づいていく。
一歩ずつ。
一歩ずつ……。