【完】そばにいるだけで
相変わらず会話はほとんど皆無だったけれど、屋上で微妙な距離を保ちながら本を読むことが、日常になりつつあった。
しかし、それを快く思わない人がいた。
城山さんだ。
彼女は、わたしが最近桐生くんのそばで本を読んでいることが、おもしろくなかったらしい。
そこで彼女は、行動に出たのだ。
ある日、いつものように屋上で本を読んでいたら、桐生くんのところに城山さんがやってきた。
「何を読んでいるの?」
と言って、彼の隣りに座り、本をのぞき込んだ。