【完】そばにいるだけで
「いいのよ、これで」
愛莉の言葉をさらりと流して玄関に向かうと、リビングの方から、
「せっかくの入学式なのに。ノーメイクとか信じられない」
と、まだ不満そうな愛莉の声が聞こえてきたけれど、わたしは聞き流して玄関の戸を開けた。
高校生になって電車通学になった。
電車で通うということが、高校生になったんだということを実感させた。
車窓から見える景色も、電車の中の混雑も、どれも新鮮でわくわくした。