【完】そばにいるだけで
すると桐生くんは、わたしを抱き寄せ、思いきり抱きしめた。
突然の出来事に、心臓が止まったかと思った。
「……草壁さんが、好きだ」
桐生くんは、わたしの耳元でそっと囁いた。
甘い声だった。
止まったかと思った心臓は、大きく波打った。
このドキドキ、伝わってしまう……。
わたしは、事態をまだ100%は飲み込めていなかったけれど、うん、とうなずいた。
そして、彼の胸に顔をうずめた。
桐生くんの腕の中は、温かかった。
そして、わたしと同じように、鼓動が波打っていた。