【完】そばにいるだけで



そんなわたしに構わず、桐生くんは続けた。



「それにね。ここで一緒に静かな時間を過ごすのが、心地よかったんだ」



そう言って、今までに見せたことのないとびっきりの笑顔をわたしに向けた。



桐生くんもこんな嬉しそうな笑顔ができるんだ、と少し驚いた。



「……わたしも。心地よかった」



わたしはうつむいたまま、小さく呟いた。



そして、わたしたちは照れくさくなって、そしてなんだかおかしくて、くすくすと笑ってしまった。


< 70 / 207 >

この作品をシェア

pagetop