【完】そばにいるだけで
そんなわたしに構わず、桐生くんは続けた。
「それにね。ここで一緒に静かな時間を過ごすのが、心地よかったんだ」
そう言って、今までに見せたことのないとびっきりの笑顔をわたしに向けた。
桐生くんもこんな嬉しそうな笑顔ができるんだ、と少し驚いた。
「……わたしも。心地よかった」
わたしはうつむいたまま、小さく呟いた。
そして、わたしたちは照れくさくなって、そしてなんだかおかしくて、くすくすと笑ってしまった。