【完】そばにいるだけで
「気にすることないって」
瑞希がちらりと城山さんの方を見て言った。
「う、うん…」
わたしは、お弁当の卵焼きをつつきながらうなずく。
「聖菜は正真正銘、桐生くんの彼女なわけだし」
「うん……」
「それにしても、中庭のど真ん中であれだけ堂々と告白するなんて、大したもんだよ、桐生くんは」
瑞希はあの告白の場面を思い出しているのか、宙を見つめ、そして、
「わたしもあんな告白されたいなぁ」
と夢見心地に言った。
わたしももちろん嬉しかったのだけれど、あれだけ沢山の人の視線を集めてしまったのかと思うと、思い出すだけで恥ずかしくて顔から火が出そうになった。
わたしは照れと恥ずかしさを紛らわすために、お弁当のおかずと次々と口へ放り込んだ。