【完】そばにいるだけで
わたしはうつむいたまま小銭を出すと、昴先輩は、
「俺、最近ここでバイト始めたから、たまに寄ってね。はい」
と言って、袋に入ったパンをわたしに手渡した。
わたしは目も合わさず、「はい」とうなずき、いそいそとコンビニを出た。
ああ、びっくりした。
昴先輩がこんなところでバイトしていたなんて。
憧れの先輩との久々の再開が、にやけ顔だったなんて、ショック。
中学時代、同じバレー部で一つ年上の昴先輩は、みんなの憧れだった。
わたしもその中の一人で、いつもついつい目で追いかけてしまっていた。
ふとした瞬間に目が合うだけで、どきどきしていた。