【完】そばにいるだけで
帰宅して、台所にいるお母さんにパンを渡すと、わたしは急いで階段を駆け上がった。
クローゼットの中から、お気に入りの服を次から次へと引っ張り出す。
どれがかわいい?
どれがかわいく見える?
やっぱりスカートがいいのかなぁ。
桐生くん、どういうのが好みなんだろう。
いろいろあてがってみるけれど、姿見に映る自分は、どれもいまいちピンと来なかった。
「はあぁ……」
ベッドに腰かけて大きなため息をついていると、
「お姉ちゃん、入るよ」
と、許可する暇もなく妹の愛莉が入ってきた。