【完】そばにいるだけで
「ごめん。待った?」
「ううん。僕も今来たところ」
わたしを見下ろすふんわりとした笑顔に、釘付けになりそうだった。
いちいち素敵な桐生くんが自分の彼氏だなんて、まだ信じられない時がある。
「じゃ、行こうか」
「うん」
わたしは桐生くんと並んで、映画館に向かった。
時々、桐生くんの腕が自分の腕に当たる。
それだけでドキドキするのに、どこかで「手をつないでくれないかな」と期待している。
自分からつなぐ勇気はないから。