お嬢っ!!
んー…。
いま、気づいたんだけど。
そういえば私、制服だ。
「どうしたんだ?」
職員の駐車場に堂々と駐車し、特に問題がなさそうにしている慎一郎さんが一向に降りてこない私を見て首を傾げた。
「……あのね、上田氏」
「な、なんだ白鳥氏…?」
「今さら気づいたんだけど…私、制服のままなのだよ」
「あ、ああそうだな…。確かに制服だと聖女ってバレるもんなあ…。何か着替え持ってくるか?」
急な事が起きても、慎一郎さんはやっぱり優しい。こんな気が利くのは慎一郎さんだけだ。うん、うん。
「お願いできるとありがたいです。」
そう言えば、慎一郎さんは一度だけ微笑んで誰かに電話をかけはじめた。
―――そして、数分後
「おいブス、この俺様がわざわざ届けに来てやったんだ。感謝しろよ」
隼人がダルそうにたらたらと歩いて来た。どうやら隼人に着替えを頼んだらしい。
慎一郎さん…。
一番イケないチョイスをしてしまったよ。
まあ、でも助かった。
「ありがとう」
「ホラよ」とケタケタ笑っている隼人からなにやら大きな袋を受け取って、中を見れば…。
――おいおい
――コレ、着れってか??
再度、隼人を見ればニヤリと楽しそうに笑って、耳につけられているピアスがキラキラと光っていた。なんとも不気味に。
「早く着ろよ、…ぶっ」
またしてもケタケタと笑っている隼人。それに吹き出しやがったコイツ。
こ、この野郎…。
ふと、慎一郎さんを見ればはあ、と困ったように額に手をあて、ため息をついていた。
ああもう!!
慎一郎さんをまた困らせてしまったではないか!!
し、しょうがない…。
着てやるよ!!
そして私は袋を乱暴に開いて中から渡された服を着るために車のドアを閉める。
‘白雪姫’の衣装に着替えるために。