お嬢っ!!
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リコちゃんは隼人から渡された着替え(というのか?)を着るために車のドアを閉めた。
そりゃあもう思いっきり。
確かにあんなの渡されて快く着ろうとは思わないだろう。でも、リコちゃんは何も言わず受け取った、やっぱりバレるのが嫌だったんだな。……それにしても何考えてんだ、隼人は。
呆れて隼人に目を向ければ、楽しそうにケケケ、と笑っているし。
「はあ…」
「んだよ慎一郎、ため息ついてると幸せが逃げるぞー」
誰のせいだ。
たっく、いつになったらマトモになってくれるんだよ。
これまで何年寿命が縮んだことか。
はあ、とまたため息をついて車から少し離れたところで2人で突っ立っていたら、いきなり肩に重みがのしかかった。
「うお!」
グランと前屈みになって危うく転びそうになった体をなんとか支える。そして微かにタバコの煙の匂いがした。
「慎ちゃん、遅いじゃねーのよ。待ちくたびれて迎えに来ちまったじゃねーか」
「千尋…」
千尋はタバコを指と指の間に挟んで、俺の肩にだらんとのしかかりながら妙に色気のある目を俺に向けた。
いまだに、高校生なのに一体どこからそんな色気漂う雰囲気をだすのか俺にはわからない。
「リコちゃんを待ってるんだよ。いま、着替えてる」
「それにしても時間かかりすぎじゃねーかぁ?おかげでエロビ2本目見る―――」
「わかったから!黙っててくれ!!」
チェッ、と言って千尋は俺から離れてタバコに口をつけた。
こうやって次から次へと問題を起こしてくるから疲労感がハンパない。俺、そのうち過労死すんじゃねーか?
真面目な悩みだ。