あおいの光
「こんにちは。はじめまして。白湯美です。」


キレイな人。


目が大きくて、色白。
歳は30前後だろうか…



ワンピースにローヒール。


赤ちゃんがいるって
あたしに主張してるみたいに見えてすごくいやだった。




「…葵です。」
あたしはそうつぶやいた。





料理はいつものフルコース。



サユミさんはここに来たことがないみたいで
目を丸くして料理を楽しんでいた。



「…葵。ママはいつ退院できるかわからない。一緒に暮らそう。」
パパがそういうとサユミさんもにっこりうなづき、
「葵ちゃん、遠慮しなくていいのよ。一緒に暮らそう?」





あたし、このサユミさんの言葉を聞いたとき、
ママの悔しい気持ちがよくわかった。



この人、
今まで自分が遠慮する立場だったのに、
子供ができた途端に、
遠慮される立場になった。
そのことをハナにかけてる。
ものすごく腹がたった。


「…離婚すれば、ママとパパは無関係になるかもしれない。
でもあたしとは一生親子なの。
あたしは遠慮なんてしない。遠慮するならサユミさんの方でしょ?」



あたしのきつい一言にパパはア然、
サユミさんは驚いて泣き出した。


あたしはその涙さえ、
信じられない。


涙なんて、この人は人を騙すためにいくらでも流せると思う。
その姑息な手で、
ママからパパを奪ったとしか思えない。



「泣くなんてずるい。あたしは中学のときからパパがいなくて、ママが泣くから泣きたくても泣けなかった。
あたしは…あなたに苦しめられてきたの。
…その上、遠慮しなくていいなんて言われて…。
一緒になんて住めないよ。パパ。」


「…葵。悪かった。パパは、こういう無神経なところも含めてサユミが好きなんだよ。」



パパは笑った。


あたしも笑った。

サユミさんは
「…私が無神経って?」

なんて言ってる。




「葵。心配するんじゃない。なにかあったらすぐに電話して。お金も必要になったらすぐ送るから。」



「うん。」




あたしはデザートもそこそこにその場をあとにした。
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