あおいの光
先生?


色弱で壊れた夢って…


「先生はなにになりたかったんですか?」


「教師は教師なんだけどな。美術のなんだ。」


「美術…」


なんだかあたし、美術と先生が結びつかなくて、

だって
あたしが知ってるのは、

ドラムを叩く先生と

あたしを優しく諭す
あったかい
父親のような手。



「絵は昔から好きだったんだ。
だけど小さい頃、海を紫に塗ったらしくてなぁ。母親はそれで俺の色弱に気付いたらしいぞ。」

笑いながら言う先生が痛々しい。

先生…


あたし、
「先生の絵が見たいよ」

「田口、だめだよ。絵は辞めたんだ。」



どうしてって聞けない。


先生の目に見える世界とあたしたちの目に見える世界は違う。



先生。

紫の海を描いたとき、
たくさん嫌な思いしたんだろうね。



夢を諦めた先生だからこそ
わたるには好きなことをなんでもさせたいって
普通の親以上にそう思うんだろうね。



「田口。弥は田口のことが…」

先生はそう言いかけてやめた。




「え?」


「いや。」


わたるの試合は
わたるの学校の圧勝におわった。


わたるの学校はかなりの強豪だし、
負けるはずはないんだけど…



わたる
バスケしてる時は別人だった。



一言でいうならクール。


リングしか見えてない。



あたし、
わたるが有名な理由がわかった。
あれだけ派手で
でも真っ直ぐにプレイしてる選手。
コートに他にいなかった。



あたし、
わたるのこと何にもしらない。



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