見えない二人の距離


ここで出ていって殴ることもできる。


だけど、そんなことをしても澪が泣くのは分かりきっていた。



「…じゃあまた考えるよ」


「もういいから。つうかおせぇし」


「………」


「じゃあもういい?オレ、行くから」



ガタッと乱暴な音がして、アイツが教室の方に向かったのが見えた。



澪は……




「…っ…」



泣くのを我慢してるのか、小さな声が聞こえてくる。



オレが出ていって抱きしめてやりたい。



そう思っても、オレは臆病者で
そんなことをすれば澪にもっと避けられる気がした。







< 51 / 85 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop