見えない二人の距離
同じ場所に、同じ音だけが響く。
オレもバカじゃねぇ。
ただ、あの言葉に期待するほど
もう澪を甘く見てねぇだけ。
はぁ……
喋ろよ、澪。
同じ所を行ったり来たり、まるで子供みたいなことをする澪がやっとオレの視線に答えた。
「……純平」
――カラン-……
石段を一つ一つ上ってくる澪。
沈黙は破られたのに、澪が近付いてくる度に胸が熱くなって喋れやしない。
ったく、どこまでも情けねぇ。
目の前で止まった澪を、オレは見上げた。
月の光が、澪をキレイにてらしてる所為でいつもより色っぽく見える。