独:Der Alte würfelt nicht.
「世界統一を果たした水上都市パンドラ。ドーム型の防護壁に守られたこの国から一歩でも出れば、有害な太陽光と汚染された外気が溢れる死の世界。過去に繁栄の限りを尽くした国も、今では死骸の重ねられた死の町に成り果てた」
「国の名前を許されたシステムで季節さえも再現し雨だって降らせる事が出来るものね。人々にIDを振り分け管理し、圧倒的な暴力によって外界から国を閉ざした」
「首都攻撃後、パンドラに降伏、亡命してきた人間以外は全て薙ぎ払われた。唯一つのシステム、“パンドラ”によって大量虐殺された世界は、数年後、自然からも猛威を振るわれる」
「この国に残る人間全て、血塗られた“パンドラ”を英雄視している。何故なら…恨み嘆き悲しむ人間は…もう誰も生きてはいないのだから」
過去に知るものの少なかった島は、世界を統括する水上都市と言われるようになった。
そして世界は統一され、Πανδώρα(パンドラ)と、呼び名を変えた。
その頃、パンドラと外界を遮断するドーム型の防護壁が建設され、環境管理システムが取りつけられた。
外界の事を知ることも無く、争いもその日を境に嘘の様に無くなり住民は平和が訪れたと歓喜しただろう。
「何億という人間が死んだ。何億という人間が助かった。死骸の積まれた血塗られた玉座の上の勝利であったとしても。どんな政策があろうとも、な」
「人体実験を重ねて、結局無駄でした。なんて、国民に向かってよく言えたわよね」
「おいおい、あれでも公認された政策だったんだからな。あの資金源が元にパンドラのシステムが新たに再構成できるようになったんだぞ」
「…でも。たくさんの人が命を落としたのよ。そんなの…悲しすぎるわ」
国はより有能な人材の発育と育成のため、生後間もない子供を回収し国が教育した。
親権者が放棄すれば社会制裁を、子供を国に預けることを容認すれば援助が受けられる。
だが国に社会的地位を約束させるため、“多額の寄付金”をかき集めていたという話も有名だ。
そして一番の問題が、子供たちが親の元に…生きたままの姿で返らなかったということ。