独:Der Alte würfelt nicht.
「女の子が路地に倒れているんだ。あと男も…」
『救急車を呼べ。以上だ切るぞ』
「ま、待ってくれ!!今回は本当に緊急事態なんだ!!」
『…現場に行って下らない事だったら、今度はそのインカムを取り上げるからな』
不機嫌な声色で舌打ちをし、大きなため息を俺に聞かせる様に付く上官のレイ・シャーナス。
一見飄々としているが実はすごい切れ者で、テロを何度も未然に食い止めてきた英雄だ。
最近、将来の奥さまとやらが見つかったらしく、今まで取り巻いていた女の子全員に断りを入れたのが記憶に新しい。
それほどまでにも大事な女が出来たのなら、さっさと結婚でもしてしまえばいいのにと何度思った事か。
「…今から言う事に冗談はない。大真面目だ、聞け』
『あぁ、聞いているよ。だから早く言え』
「女の子が生首と一緒にぶっ倒れてた」
『………………はぁ?』
俺はその後、混乱する頭で必死に説明をした。
半ば半信半疑で聞くシャーナス将軍は、最後は諦めたように車を出してくれると言った。
通信が切れて車を待つ間、今更遅くも自分の濡れた上着を少女の体に被せる。
その眠りが、咽るほど香る血の匂いに妨げられないように。